bittersweet
「そこらへん走ってるからすぐにつかまると思う」

吉岡くんが道路をキョロキョロと見る。

心遣いが嬉しかった。たとえ営業用のやさしさだとしても・・・

すぐに1台のタクシーが止まってくれた。

「それじゃ。また連絡するから」

「っ!!!」

吉岡くんの唇が私の唇をそっとかする。

キスというほどでもないのかもしれない。

みんなに当たり前にやってる当たり前のこと。

きっとなんでもないこと・・・

パンッ!!!

「イテッ!!」

思考より先に手がでてた。私は条件反射で吉岡くんの頬を平手打ちにしてた。

「ご、ごめんなさい!」

自分のしたことに1人混乱しあわててタクシーに乗った。

住所を告げてすぐに発進してもらう。

吉岡くんがどんな顔をしてたのか見る勇気もなかった。

もう終わってしまったと思った。
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