××夫婦、溺愛のなれそめ
ちょっと待って。この子、すごい。遠藤真由さん、完璧すぎない?
聞けば海外の有名大学に通っていたとかで、英語もできる。当然頭も良いんだろう。
私に教えながらも、自分の仕事はきちんとやる。
周りのフォローもし、彼女の気遣いで場の雰囲気がとても良くなる。
誰にでも変わらない優しい接し方で、誰の悪口も言わない。
誰とも仲良くなれない私でも、彼女のことは好きになってしまいそうだ。女子を信用しない方が良いのは前の職場で思い知ったはずなのに。
でもなんだろう……胸の中にモヤモヤが広がっていく。それが嫉妬だと気づくのに時間はかからなかった。
私は性格が悪い。
いつも集団の中では疎まれる存在になってしまう。若い頃は私が可愛いから妬んでいるんだと思っていたけど、二十歳過ぎたらその思いこみはイタイことに気づいた。
どこにいってもなんとなく嫌われる私。誰にでも好かれる真由さん。
「はあ……」
トイレで盛大なため息をつく。
やっぱり私は、レヴィの奥さんとして失格なんじゃないだろうか。人の上に立つ人の奥さんが嫌われ者って……。
逆立ちしたって、私は真由さんみたいにはなれない。
彼女の人間力を見せつけられるたび、私は深い自己嫌悪に陥るのだった。