××夫婦、溺愛のなれそめ
「レヴィ……」
彼も言いたいことを一気に吐き出して消耗したのか、はあはあと息をついていた。
そして、しんと静まり返ったところでハッと目を見開く。
「ご、ごめん。怖かった? 莉子を脅すつもりなんてこれっぽっちもなかったんだ」
彼はテーブルを叩いた自分の手を、信じられないものを見るような目で見つめた。
その様子を見ていたら、ぎゅっと胸が痛くなった。
この人、きっと「嫌だ」なんて駄々をこねたのが初めてなんだ。そんな自分に戸惑っている。
「怖くなんてない。大丈夫」
レヴィの手をそっと包みこむ。
「ありがとう、レヴィ。私が間違っていた。誰より先に、あなたに悩みを打ち明けるべきだった。私たち、夫婦なんだもの」
レヴィはいつも私を一番に思ってくれていた。なのにへそを曲げて素直になれなかった私が悪かった。
謝ると、レヴィはホッとしたように眉を下げる。瞳の中、金色の炎はいつの間にか消えていた。
「本当に彼とは何もないんだよね?」
「ないわ。あの日私、早く帰ってきたでしょ」
「そう言えばそうか」
いわゆる大人同士の触れ合いがあったなら、レヴィの餃子が出来上がる前に帰ってくることは不可能だっただろう。
レヴィもそこはすぐに納得してくれた。