××夫婦、溺愛のなれそめ
しばしの沈黙のあと、真由さんは乾いた唇を開いた。
「私が……私が、情報を流しました」
その告白に、彼女をかばった人たちの顔が青くなっていく。
そして裏切られた怒りが沸いたのか、すぐに赤く染まっていった。
「多部さんのことが、ずっと好きでした。でも彼はツンとした美人が好きで……でも振り向いてほしくて、開発部の情報を流しました」
「どうやってその情報を手に入れたんですか」
「開発部の人と仲良くなって……興味があるって言ったら、すぐに見せてくれて……」
真由さんの声に涙が混じって聞こえた。
言葉は柔らかいけど、つまりは開発部の人間にうまく取り入って情報を見せてもらい、それをこっそりコピーして博之に渡したんだ。
彼女は、自分が誰からも好かれる人間だとじゅうぶんわかっていた。だから、そんなことができた。
「その者の名前はあとで教えていただきます」
不用意に、権限のない者に情報を閲覧させたことで、開発部の人間も厳しく処罰されることだろう。神藤さんの冷たい声からそれが予測された。