××夫婦、溺愛のなれそめ

いつもとは別の駅から会社に向かうと、それだけで新鮮な気分だった。

定期を買い替えなきゃいけない。そう思いながら携帯を見ると、レヴィからメッセージが来ていた。

『夕方、そっちの会社に迎えに行くよ。また昼間に詳細を連絡する。じゃあ、仕事頑張って』

そう言えば、今夜は彼のお父さんと食事の約束をしているんだった。迎えに来てくれるなんてありがたい。

『ありがとう。そちらも頑張ってね』

シンプルなレヴィのメッセージに、可愛いスタンプを付けて返した。けど、なかなか既読にはならない。もう彼の仕事は始まってるんだろう。

携帯をしまって数分歩くと、すぐに見慣れた会社のビルにたどり着いた。

エレベーターで五階に上がり、いつものオフィスのドアを開ける。

「おはようございます」

誰にというわけではない、おざなりな挨拶。あちこちから小さく返事が返ってくる。

自分のデスクの椅子を引き、腰を下ろす。

ちなみにうちの会社はプラスチック容器を扱っている。化粧品や文房具、食品、どんなものの容器も作る。

私がやっているのは、平たく言えば在庫管理。どの製品がどれだけ売れているかを把握し、在庫が多くなりすぎないように生産量を調整するよう、工場と連絡を取るのが主な役割。

< 37 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop