俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
「千和だって結婚しているんだろ?」

「残念、まだ婚約中です」

おどけて言うと、陸斗は少しだけ驚いた顔を見せた。

「じゃあそれ婚約指輪か。……見るからにすげぇ指輪だな。愛されてるじゃん」

愛されている? 私が和臣さんに? 本当にそうなのかな。私、陸斗みたいに幸せそうに見える?

疑問がよぎるも、六年ぶりに会った、それも元彼にこんなディープな話などできるわけがない。

「ありがとう。すごい指輪でしょ?」

自慢するように左手を挙げて指輪を見せびらかせると、陸斗は呆れ顔を見せた。


「はいはい、すごい指輪だよ。……千和が幸せそうでよかった。ずっと心に引っかかっていたんだ。ほら、俺たちあんな別れ方しちゃったからさ。千和は今、ちゃんと幸せか心配だった」

「陸斗……」

意外な元彼の本音に胸が苦しくなる。


本当に私は今、幸せだって胸を張って言えるのかな。初めて好きになった人で、恋愛をする上で経験するすべての初めてを知った陸斗の前で。

彼はベーグルサンドを大口で頬張る。
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