俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
相変わらずな彼にふと笑みが零れ落ちる。

「和臣さん、帰りましょう」

「……千和」

彼に手を差し伸べると、和臣さんは私の手と顔を交互に見ては目を潤ませた。

「え、ちょっと和臣さん?」

目をゴシゴシと拭く彼に驚き声を上げてしまう。

「すまん……まさか千和が来てくれるとは夢にも思わず……もう一生口を利いてもらえないかと思った」

「和臣さん……」

まるで子供のような彼に愛しさがこみ上げる。

だめだな、私はやっぱり和臣さんのことが大好きだ。

情けない姿さえも愛しいと感じてしまうのだから。

「もう、泣かないでください! 早く帰りましょう」

「……あぁ」

私の手を取ると彼はゆっくりと立ち上がった。

かっこいい姿も情けない姿も、こうしたちょっと女々しい姿も全部が和臣さんなんだよね。

田中さんと一緒に三人で会計などを済ませ病院を出ると、田中さんは耳を疑うことを言った。
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