オレンジ色の恋 ~切なさは誰の物?~
「あっ、ごめん。行こ」

「うん……」

わざと綾斗から視線をはずすと、私は綾斗の隣を通り過ぎた。

どうしていいかわからない。
この胸がギュッと締め付けるのは……。

あえて考えないようにすると、私は教室のドアを開いた。

「ねえ、結花」

前に座った亜美がジッと私を見た。

「なに?」
「好きな人できた?」

「え?」
ドキンとして私は、持っていた教科書が手からスルリと落ちるのをただ見ていた。

机の下に落ちた教科書を拾いながら、亜美はニコリと笑うと、

「わかりやすいな」
そう言ってまたジッと私を見た。

「違う!違う。そんなんじゃない!好きじゃない」
慌てて言った私の言葉に、亜美は『ふーん』とだけ言った後、

「きちんと話したくなったら話して。素直じゃない結花ちゃん」
優しく笑った亜美に、敵わない思いでいっぱいだった。

亜美、でも私……好きじゃない。
まだ好きじゃない。

身の程知らずの恋なんてしたくない。
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