オレンジ色の恋 ~切なさは誰の物?~
「今年の新入部員を紹介する!」
3年生で部長の石田敦先輩の声に、私も部室の中で少し緊張して前に出た。

「じゃあまずは……」

「すみません!遅れました!」
部長の声をかき消すように、ガラリと大きな音を立てて空いた部室のドアに、そこにいたみんなが視線を向けた。

全力疾走してきたのだろう、その彼は、俯いて肩で大きく息をしていた。
「綾斗……お前はまったく……」
少し呆れたような声で言った部長は、またみんなを見た。

「綾斗、早く前に並べ」
「はい!」
最後に大きく息を吐いて、顔を上げたその人を見て、私はドキンと胸が鳴り、息が止まった。

彼だ……。

消せない携帯の中の、君の少しはにかんだ笑顔がそこにはあった。


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