見た目通りには行かない





「幸輝!」



尊の苛立ちを含んだ声にまずいと感じた俺は川口さんを引き寄せた



「とりあえず、お前ら川口さんは尊の客だ」

「え?若の?」

「ほら川口さん行こう」

「あ、はい」

「わ、若!幸輝さん!お願いします!川口麗さんに稽古を!」

「は?稽古?」



稽古?なんの事だ?


「稽古?うそ!本当に?」



今度は川口さんが目を輝かせた







ばんっ!ばんっ!
色気もない音が響き渡っていた


「次!」

「はい!お願いします!」


ばんっ!


可愛い声とは裏腹に大きな男を投げ飛ばしているのは紛れもなく正木コーポレーション企画課 川口麗だ

となりでは尊がクックッと楽しそうに笑っていた




「どうだ?お前のお眼鏡にはかなったか?」

「…………尊知ってたのか?」

「知らねぇよ、人事は親父だ」

「まさか、あの子がね」



川口麗の名前を聞いた時に聞いたことがあったと思ったのは間違いじゃなかった
思い出せないのは仕方ない
もう川口麗の名前を聞かなくなって六年程経つのだから


美人高校生柔道家 川口麗
なんとも、メディアする煽り

当時高校生だった彼女はその美貌と強さで有名だった
それでも高校卒業と共にあっさりと柔道の世界から居なくなった
オリンピックのメダルも期待されていたのに



まさか、あの川口麗が自分の会社にいるなんて誰が思うよ

しかも、高校生だった彼女は今では大人の女だ
極上の






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