見た目通りには行かない





「そうか……麗ちゃんはさ、尊のことどう?」

「え?」

「告白されたから付き合ったの?」



私は首を横に振った

そもそも、告白なんてされてない気がする
悩みの原因はそれだ



「尊はさ、恋愛に臆病なんだ
愛情を押さえてしまうし、言葉にするのが怖いんだ」

「怖い?」


それは、私も感じたものだった
社長は何かを怖がってる様な……
言葉に出来ない怖さ


「傷付くのが怖いんでしょうか?」



恋愛なんて傷付け傷付けられての繰り返しな気もする
それでも、信じる事が出来るのか




「そうかもね、でも麗ちゃんは言葉が欲しいよね?」

「………っっ」



好意は感じるのに言葉がない
それは思いの外、現実に私を苦しめている
だから、噂話にさえも悩んでしまうんだ


カツカツと靴の音が響く
きっと戻ってきたんだ



「麗ちゃん、ごめんね」

「え?」



扉が開いたのと殆ど同時だった
私、いま………幸輝さんに抱き締められてる?


え?


「幸輝!」



尊さんの怒りを露にした声に私は幸輝さんの腕の中で大きく反応してしまう
あまりの驚きに抵抗さえできなくて、気が付いたら今度は尊さんに抱き締められていた



「麗に触れるな!」

「俺、諦めないって言ったよね?麗ちゃん、尊より俺の方が上手いよ?きっと」



上手い?え?何の話?

私は今の現状に頭がついていかない
幸輝さんは私の耳にそっと囁いた



「セックスだよ?」


そう言って私の耳にキスをした


「なっ………」


なんてことを!





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