“あなたを愛しています”








司君の作ったサンプルを見て、佐藤さんは泣きそうな顔をした。

そして、何度もありがとうございますと頭を下げる。

司君には無理をさせてしまって、本当に申し訳なく思っている。

だけど、佐藤さんが喜んでくれたことは本当に嬉しかった。





「この絶妙なグラデーションが綺麗ですね」



「カラードレスと合ってる!」



「やっぱり桜庭先生は違いますね」



感激しっぱなしの佐藤さんに、



「先生とかやめてくださいよぉ」



司君は恥ずかしそうに言う。

そんな奢らない司君にますます好感が持てる。

私が司君なら、すごいだろうと自慢し続けるだろう。

そして、破格の値段であることを念押し続けるだろう。





そう……

佐藤さんは満足しきっていると思っていた。

まさか、値段の話を出した瞬間、豹変するなんて思ってもいなかったのだ。


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