“あなたを愛しています”
司君は私の手を握ったまま、夜の道を歩いた。
繁華街から少し離れたこの場所は、繁華街の賑やかさが嘘のような静かな住宅地だった。
途中、仕事帰りのサラリーマンやOLとすれ違う。
そんな静寂の中、司君が静かに告げる。
「弘樹から連絡が来たよ。
俺のこと、花奈ちゃんに話したって。
それで、花奈ちゃんが俺を探してるって」
「うん……」
「それで、花奈ちゃんどこかなって探してたら……
俺の仕事場にいるなんて……」
司君の声は、甘くて心地よくて、そしてどこか切なげだった。
そのまま、震える声で私に聞く。
「俺の話……引いた?」
震えているのは声だけではない。
私を握るその優しい手だって震えていた。
だから私は、そっと手を握り返す。
「ううん、引かない」