ほんもの。

見る度にそう思うのだから、いい加減これを渡そうと思っていた。

「……安藤にあげようと思って」

「いや要らねえ。そうじゃなくて、どうやってこれ手に入れたのかって」

「お兄ちゃんが持ってた。文化祭実行委員だったんだって」

ぽかん、とした顔。そんな安藤の表情を見られるなんて珍しくて、私はとっさに携帯を取り出そうとしてしまった。

「月白……月白……」

「いやいいよ、絶対思い出せないでしょう。クラス沢山あったし」

「……申し訳ない」

いいってば。

本当に申し訳なさそうにする顔に、この写真をどうしようかと見る。

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