ほんもの。
顔が強張った。というか、引き攣った。
「遅れてごめんなさいね、さあ十和子ちゃんも座って」
初めて会ったおばさんに馴れ馴れしく名前を呼ばれることに疑問を感じるよりも、目の前に座る人の姿を直視できなかった。
あれ、これが幻でないのならば、私の目の前に座っているのは安藤のような気がする。
私に三島さんのことを聞いてきた安藤。
あれから見ていなかったけれど、こんなところで会うなんて。
「こちら、安藤泉さん。茅野旅館の息子さんです」
旅館……? いま旅館と言いました?
おばさんが次は私の方へ手を向ける。