ほんもの。

話さないとこの気持ちに決着がつかないことは分かっているけれど、その覚悟ができない。

安藤とは付き合ってるけれど、婚約もしたけれど、それが何の確約になるのか。

それはずっと忘れていたけれど、前にも考えたことがある。
私が既婚者である三島さんと付き合っていたときのことだ。

結婚しても、心は誰かのものになる。
目に見えるものは所有できても、目に見えないものは所有できない。

過去も未来も、時間も、心も。

ディスプレイが急に変わり、そこに安藤泉の名前。

出ようか、出まいか。考えていると、着信時間が終わる。

< 205 / 235 >

この作品をシェア

pagetop