ほんもの。
もう一度かかってきて、また出ないで切れた。
このモヤモヤは、たぶん安藤に対して感じているものではない。
あの正面に座っていた女性に対して、感じている。
あの女性、なんとなく既婚者な気がする。
すとん、とそれが言葉になってお腹の方に落ちて行った。
いや別に高校の友達が既婚者になってても良いのだけれど、女性は年上に見えた。
どちらにしろ、私には言いたくないことなんだろう。
ベッドに寝転がる。じゃあ、聞かないまでだ。
家のチャイムが聞こえたから。ハッと身体を起こして時計を見る。
昼をとっくに過ぎて、夕方に差し掛かっていた。