ほんもの。
私たちは玄関でもつれて何をしてるんだ、と床を見て思う。
「月白さん」
「聞こえない」
「十和子」
耳の後ろからその声が聞こえる。
本当、何してるんだろう、私。
付き合ってた人と別れて、その後こんなことになってるなんて。
安藤が離れて、やっと足を投げ出すことが出来た。もう考えるのは止めだ。眠って、起きたら考えよう。
ぺリぺリとビニールの音が聞こえて、眠ったまま安藤の方を見た。
新しい袋を開けようとしている姿に、瞬きを繰り返す。
「え、え? や、もう無理、です」
「最後の一回」
「それさっきも言ってた!」