ほんもの。

私たちは玄関でもつれて何をしてるんだ、と床を見て思う。

「月白さん」

「聞こえない」

「十和子」

耳の後ろからその声が聞こえる。
本当、何してるんだろう、私。




付き合ってた人と別れて、その後こんなことになってるなんて。

安藤が離れて、やっと足を投げ出すことが出来た。もう考えるのは止めだ。眠って、起きたら考えよう。

ぺリぺリとビニールの音が聞こえて、眠ったまま安藤の方を見た。

新しい袋を開けようとしている姿に、瞬きを繰り返す。

「え、え? や、もう無理、です」

「最後の一回」

「それさっきも言ってた!」

< 55 / 235 >

この作品をシェア

pagetop