白馬に乗った上司様!?
「いや、そんな、西春さんが謝る事じゃないから。ほら、頭上げて」

そのまま肩を掴んで強引に上げさせられた時、視界に入ってきたのは真正面の近距離、真剣な顔で私を見つめる菊里課長。

その真っ直ぐな視線に吸い寄せられて、思わず私も見つめ返してしまった。

「ーーー澄んでる」

そのまま、どれだけの時間が経ったのだろう。我に返ったのは課長の呟きが聴こえてからだった。

お互いはっとした顔を見合わせて慌てて数歩ずつ後退りしたけれど、次の行動が取れない。私は顔をそらして、赤面したまま。

「‥‥あの、送ってく」

「はい」

私同様、顔をそらしたままの課長の言葉に、ようやく頷くだけの返事をしてゆっくりと歩き出した。

菊里課長の数歩後ろ、距離を変えないまま、言葉を交わさぬまま。



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