誰かがどこかで救われる

杏珠の家でトイレを借りて
洗面所で手を洗いながら考える。

よその家ルールと我が家ルールは違う

後輩のアリサちゃんの家は、テストの点数でおこづかいが変化する。
西川先輩の家は、大人も子供も自分の食べた食器は自分で洗って片付ける。
萌ちゃんの家は、土曜日の夜は必ず外食。

もっとある
だから
杏珠の家は
友達にはずっと家に居てもらって
お腹が空いたらピザとって
ピザが嫌なら遅い時間に子供だけで食べに行って

なのかな?

遅い時間に街で見た杏珠の姿は、杏珠の家では普通なのかな。

でもあのお父さんは、私を邪魔に思ってる感じ

とにかくお母さんが絶対怒ってるから、早く帰りたいけれど、優柔不断な私は杏珠から離れられないという。

うーん

洗面所の鏡で髪を直していたら
その隣のお風呂場で、杏珠のお父さんの声がした。

お風呂掃除してるのかな
えらいなぁ
うちのお父さんにも見習って欲しい。

「杏珠かい?」

お風呂場で掃除をしながら
杏珠のお父さんは私を杏珠と勘違いして話しかける。

「あっ……あの……」

「友達はいつ帰るの?もう遅いから帰ってもらいなさい」

ズバリ言われた
うわぁ気まずい
早くこの場を去ろうと思ったら

「今日はお母さんは帰らないよ。終電には間に合わないから、職場の人の家に泊まるって……さっき連絡来た。杏珠を頼むねって言ってたから」

気のせいか
どこか粘着性のある甘えた声だった。

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