銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
今の私には絶対に手の届かない人。

好きになっても辛いだけ。

もうしばらくすれば、私は男爵家に戻る。

側にいてはいけない。

「……私……自分の部屋に戻ります」

彼から離れようとするが、すかさず「ダメだ」と言われ、煎じ薬を飲まされた。

「……苦い」

あまりの苦さに顔をしかめると、ジェイは意地悪な視線を向けてくる。

「飲まないなら、俺が口移しで飲ませてもいいが?」

「飲みます!」

上目遣いに彼を睨み、一気に飲み干した。

そんな私を楽しげに眺め、彼は「いい子だ」と私の頭を撫でる。

子供扱いされ、カチンときた。

「もう子供じゃないわ!」

彼に噛み付けば、「充分知ってるよ」と私の胸元に目を向けた。

キッと睨んで胸を隠すと、彼は面白そうに目を光らせた。

「今更隠しても遅い。もう全部見て知ってる」
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