銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
彼女の側を離れると、ベッドを下りて小声でギリアンに告げた。

「彼女はレノックス公爵の娘だ。訳あってカツラを被り、コンラッド男爵令嬢に扮しているが……」

彼女の素性を明かせば、こいつは「なるほど。道理で……」と呟きあまり驚かなかった。

「もっと驚くかと思ったが」

意外そうに言えば、ギリアンは静かな声でその理由を話す。

「今日昼食会の後、陛下が彼女のことを『知性も教養もあってとても素晴らしい女性だ』と褒めていたんですよ。なんでもヴァイオリンを陛下の前で演奏したとかで……。田舎娘にしてはおかしいな……と疑問に思っていたのですが、レノックス公爵の娘ということなら納得です」

そんなことがあったとは知らなかった。

「面倒で昼食会に出席しなかったが、彼女のヴァイオリンが聞けたなら出ればよかったな」

「たいそうご執心じゃないですか」
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