銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「あれは特別だ。今日も彼女に助けられた。俺を矢から守ろうとして、怪我を負ったんだ」

胸が痛くなるのを感じながらギリアンに説明する。

「そうだったんですか。小さな虫でも怖がりそうなのに、話を聞く限りは勇敢な女性のようですね」

チラリとセシルに目を向け、こいつは小さく微笑んだ。

「勇敢というより……無鉄砲だな。少しは大人しくしていてくれればいいのにって思う」

だが、彼女はじっとしていてはくれないのだ。

そんな愚痴をこぼせば、ギリアンはフッと笑った。

「あなたでも手懐けられない女性がいるとは驚きですよ」

「手懐けるどころか、彼女に翻弄されてる」

溜め息交じりに言えば、ギリアンは面白そうに目を光らせた。

「それにしては、嬉しそうですけどね」

「……お前にはそう見えるんだな。こっちはハラハラしっぱなしで、心臓が止まりそうだ」
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