銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
9、夢の舞踏会
「この薬……何度飲んでも苦い」

ジェイの部屋で煎じ薬を飲みながら顔をしかめる。

私が怪我をしてから五日経った。

『怪我が治癒するまでは、俺の部屋にいてもらう』

一方的にジェイに告げられ、ずっと彼の部屋に寝泊まりしている。

だって、反論出来る雰囲気じゃなかったし、逆らったらベッドに縛り付けられていたかもしれない。

それくらい彼の表情は険しかった。

それで、今、彼は私が煎じ薬を飲むのをじっと見ている。

仕事でこの部屋を出る時以外は、ずっとここにいて私の世話。

『もう大丈夫』と言っても私が自室に戻るのを決して許さない。

おかげですっかりギリアン宰相とゴードン近衛兵長に顔を覚えられてしまった。

しかも、ふたりは私の素性を知っている。

多分、ジェイが話したのだ。

口止めしたのに……。
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