銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「元々見るのは好きだったが、関心を持ったのは塔にいた時かな。俺が叔父に塔に閉じ込められたのは知っているだろう?」

「ええ」

「鉄格子から眺める空に浮かぶ月や星だけが俺の希望の光だった」

いつか外に出てやる。そして、サーロンを倒す。

そう月に誓った。

「そうだったのね。私も兵から逃げてた時、いつも夜空を見上げてたわ。不思議と気分が落ち着いて……。
ジェイは……昔は、金髪だったのでしょう?」

セシルは何か思い出したのか、俺の顔をじっと見た。

「ギリアンにでも聞いたのか?」

静かな声で聞き返せば、彼女は首を横に振る。

「違う。ジェイの部屋の肖像画」

「ああ。あれか。そう。昔は金髪だった。だが、塔にいる時に一夜にして銀髪に変わった。多分、ひどい拷問を受けたせいだろう」

小さく笑う俺の手に、沈痛な顔でセシルは触れてくる。
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