銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
もちろん、拷問で身体がひどく傷ついていればその日は出来ないし、作業したとしても爪の先程しか削れない。

心が折れそうになったこともある。

だが、決して諦めなかった。

そして、格子が何本か外せるようになって、俺は窓から脱出した。

塔の窓を抜ければ、そこは傾斜のある屋根。

下に降りたくても、監視がたくさんいて降りれなくて……。

残った選択肢は、荒波の海に飛び込むことだった。

海は青というよりは黒に近くて、一目見ただけで深いとわかる。

それに、海の流れが早い。

泳ぎが得意な者でもここで泳げば溺れる。

そんな海に飛び込むなんて命知らずだ。

だが、それしか道がないならやるしかない。

今まで海の塔に閉じ込められて無事に脱出出来た者はいなかった。

監視に捕まるか、海で溺死するかして不幸な末路を辿った。

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