銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
ベッドで寝ているわけにはいかない。

王太子妃らしく振る舞わなくては。

「でも……顔色が悪いですよ。少しパンでも食べますか?」

クレアが私を気遣って声をかける。

食欲はないから断ろうと思った。

でも、式の行程を考えると、何か食べて体力をつけておく必要がある。

「そうね。お願いするわ」

そう返事をすると、クレアは料理場まで行って焼きたてのパンを持ってきてくれた。

いつもならその香ばしい香りにうっとりするのに、今日は胸のあたりがムカムカする。

頑張って食べなきゃ。

式で倒れるわけにはいかない。

パンをちぎって口の中に放り込む。

……なんとか食べれるかも。

そう思ってパンを一個食べたのだが、急に吐き気がして、手を口に当てた。

……気持ち悪い。

「クレア、桶を持ってきて!」

私の異変に気付いたエミリーがクレアに向かって叫ぶ。
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