銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「セシル様、さあ」

クレアがすぐに桶を持ってきてくれて、気持ち悪くて戻してしまった私の背中をさすった。

そんな私をエミリーがじっと観察するように見て、何かピンときたのかパッと目を輝かせる。

「ひょっとして、セシル、お腹に赤ちゃんがいるんじゃない?私の従姉も同じような症状で医者に見てもらったら、『ご懐妊ですね』って言われたそうよ」

赤ちゃんがいる⁉︎

本当に?

驚く私に、エミリーは得意げに説明する。

「吐き気がするのは多分悪阻ね。赤ちゃんが出来た最初の頃に、悪阻になるって前に読んだ本にも書いてあったわ」

「まあ、大変!すぐに宮廷医に診てもらいましょう」

宮廷医を呼びに行こうとするクレアを慌てて呼び止める。

「待って!お医者様に診てもらうのは式の後にしましょう。大騒ぎになるわ」

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