銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
年は十六で、おしゃれや恋愛には興味がなく、屋敷に一日中引きこもってひたすら読書。

私が礼儀作法に詳しいこともあり、彼女付きのメイドになった。

「この本ですね」

茶色い革装の本を手に取り、梯子をゆっくり下りると、エミリー様に手渡した。

「ありがと」

形ばかりの礼を言って、彼女は側にある椅子に腰掛け、早速本を読み始める。

「エミリー様、たまには外を散歩しませんか?今日はいいお天気ですし、気持ちいいですよ」

にこやかに笑って外に誘うが、彼女は顔をしかめた。

「嫌よ、面倒だわ。本を読んでる方がいい!」

勉強熱心なのはいいが、たまには運動をした方がいいのに……。

すぐに本に目を戻す彼女を見て、ハーッと溜め息をつく。

すると、図書室のドアが勢いよく開いて、彼女の父親であるコンラッド男爵が部屋に飛び込んで来た。

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