銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
クレアが持ってきてくれた私の宝石を売って町や村を転々とする生活。

宿がなくて、時には野宿もした。だけど、野盗に襲われることも珍しくなくて、短剣で身を守ることもしばしば。

私の唯一の家族となったウィングは、野盗に襲われた私を助けるために死んでしまった。

生きる気力をすっかりなくしてしまった私。

クレアはそんな私を叱咤して、このコンラッド男爵の屋敷に連れて来た。ここはケンジット王国の辺境の地で、隣国のサダーン王国との国境に接している。

この地に来たのは、クレアの父がコンラッド男爵家で執事をしていたからだ。

クレアの父のコネもあり、彼女と共に男爵に雇ってもらった。

ここで私の素性を知っているのはクレアだけ。

私の容姿は目立つから、自慢の金髪は黒毛のカツラで、赤い瞳は前髪を長くして隠している。

エミリー様は男爵令嬢。

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