銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
う……そ……。

彼も私だって気づいている‼︎

でも、今……私はエミリーだ。

例え彼でも、自分の正体を明かすことはできない。

「わ、私は……コンラッド男爵の娘のエミリーです。

ここは……どこですか?」

彼の顔を見ずに名乗ると、話題を変え、少し身を起こして辺りを見回す。

高い天井にはシャンデリア。

大きなドレープカーテンには金と銀の糸で刺繍が施されていて、とても豪華だ。

床には細密画のような図柄の絨毯が敷かれていて、今私がいるのは……真っ赤な天蓋付きのベッド。

元公爵令嬢だけど、こんな絢爛豪華な寝室は初めて見た。

まるで国王陛下の寝室みたい。

ジェイって一体何者なの?

「ここは宮殿の中。あまりに派手な部屋で驚いたかもしれないが、前王の趣味で、どの部屋も作りは似たようなものだ。建て直したいところだが、そんな資金があれば別のことに使う」

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