私たちは大人になった

「そうだ、思い切ってその二人でくっついちゃえば?」

気まずい視線を感じていたら、同じテーブルにいたサークル仲間の一人から突拍子もない提案があった。

「浩市と、留美か…考えたこともないけど、意外と合うかもな」

先ほどのお返しとばかりに宇野君がニッコリと微笑む。宇野君自身は絶対にそんなこと思ってないはずなのに、宇野君の発言を受けて、俄に周りは盛り上がりだす。
運の悪いことに今日集まったのは、みんな既婚者や恋人がいるメンバーばかりで、フリーなのは私と安川君だけだった。
余り者同士で無理矢理カップルにしようとするなんて、中学生並の発想だ。

「うーん、安川君は正直あんまり留美にはオススメしたくないんだけど…」

安川の過去の浮気を知っているだけに、かなえだけは渋い顔をする。

「ちょっと、ちょっと、みんな。今日は二人の結婚のお祝いだから」

げんなりしつつ、勝手に盛り上がる皆を止めに掛かる。もう一人の当事者も加勢しろよと、安川君の方を見れば、どういう訳か彼は私の方をじっと見つめたままで、自然と視線が合う。



「留美、今度デートしよう」

次の瞬間、別の意味で空気を読まないひと言に、私は言い返す気力もなく呆然とした。人は本当に呆れ返ると怒りの感情も湧かないのだということを、初めて知った。

周りの盛り上がりは最高潮となり、早くもカップル誕生だと喜び出す。



───すっかり忘れていたけど、安川君はこういう男だった。
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