オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
緊張がピークに達した。このドキドキは絶対に浩太郎さんにまで伝わってる。

すると私をホールドしていた腕が身体から離れた。

その代わりに浩太郎さんは私を身体ごと自分の方へと向けさせた。

「冗談だ。でも……このまま普通に帰したくはない。悪い許してくれ」

浩太郎さんが私の顎に手をかけクイっと上を向かせた。

そして顔が近づいてきたかと思ったらもう私の唇は浩太郎さんの唇で塞がれていた。

事前に謝られたら抵抗もできなくなる。

全て解決してからっていったのに……。

でも私は黙ってキスを受け入れていた。

だが、私が想像していたようなキスとは全く違っていた。

彼の舌先が私の口の中を割って侵入すると、私に舌を絡ませる。

胸はうるさいほどドキドキし、息遣いも荒くなる。

だが浩太郎さんはキスを止めようとはしなかった。

少しでも離れようとすれば、逃がすものかと歯列をなぞる。

どうしよう、キスだけで頭がぼーっとして、身体に力が入らなくなる。

このまま続けたら私帰りたくなくなっちゃう。

そう思った時だった。

突然電話が鳴った、と同時に現実に引き戻されるように私たちは唇を離した。

これをラッキーと思うべきなのだろうか……だってこのまま邪魔が入らなければ自分から約束を破るところだったから。

まが胸の鼓動は収まる気配は感じられない。

電話はコンシュルジュさんからだった。

タクシーが来たとのこと。もう帰らなくてはいけない。

電話を切った浩太郎さんが私の顔をじっと見た。

そして私の唇を親指の腹で拭う。

「エロ顔。そんな顔運転手に見せるなよ。ほら行くぞ」

そういって玄関へと向かった。

エロい顔って誰がそうさせたのよ。っていうか私どんな顔してるのよ。

案の定、呼んでもらったタクシーの中で私はずっと顔が火照ったままだった。
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