オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
何で好きな人が妹なの?

信じられなかった。それは裏切られたという感覚とは違っていた。

そもそも自由奔放な香奈は家にいることは少なく、10年も付合って何度もうちに遊びに来たことがある智也でも香奈と会ったのは半年前が初めてだ。

それに香奈には同棲中の彼氏がいて最近も2人で婚前旅行だといって海外旅行に行ったばかり。

正直智也の入る隙などない。と言うことはもしかして……

「私と別れたいから香奈の名前を出したの?」

他にちゃんとした理由はあるが、言いにくいからカムフラージュのために香奈を使ったのではと思った。

だが智也は首を横に振った。

「遥《はる》のことが嫌いになったからとかじゃないんだ。香奈ちゃんの事が好きなのも嘘じゃない。半年前に遥の実家で初めて香奈ちゃんにあっただろ?あの時に一目惚れしてしまったんだ」

「で、でも香奈には彼氏が――」

「知ってる。だけど香奈ちゃんが好きな気持ちのまま遥と付き合い続けるなんて自分が許せないんだ」

たしかに別の誰かを思ったまま付き合いを続けても良いことなんかない。

ないけど、そんな簡単に片付けられる話だと思うの?

10年だよ。1年や2年の話じゃない。

この10年の間に私は智也に全ての初めてを捧げた。

だけど智也は私との10年という年月よりも一瞬の情熱を選ぶというの?

「私と別れたからといって香奈が智也を選ぶとは限らないのよ。それでも私と別れるというの?」

智也は私の目を見てゆっくりと頷いた。

本気なんだ……。
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