嘘つきな君
















「――悪い。」


うつ伏せでベットに沈む私の髪を一束持ち上げて、彼は小さく呟いた。

それでも、もはやその言葉に返事する気力も私には残っていない。


どちらの汗か分からないものが体を覆う。

もう指先一つも動かせない私は、荒い息を繰り返すだけ。


「無茶した」


乱れた私の髪をすいて、ゆっくりと隣に寝転んできた彼。

黒目がちな瞳が、申し訳なさそうに私を映している。

その姿に、頬を持ち上げる。


「明日……」

「え?」

「明日、仕事がなくて良かった……」


ようやく声に出せた私の言葉を聞いて、彼がふっと笑う。

そして、優しく私の頬に指を這わせて、瞼にキスを落とした。


「常務は私を殺す気?」


呼吸が整った所で、非難がましく隣の彼を睨みつける。

何度したか分からない。

初めて、気絶するかと思った。

まだ、体の至る所に力が入らない

そんな私の睨みも全く効果がないみたいで、天井を見上げていた彼が、ゆっくりと視線を私に戻して不敵に笑った。


「今日のお前見てたら、我慢できなくなった」

「――っ」


やっぱり私の負け。

そんな事言われたら、何も言い返せなくなっちゃう。

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