嘘つきな君
「それなら、芹沢さんは大輔さんに指名されて秘書になられたの?」
紅茶に口をつけていた彼女が、私の言葉を聞いて声を上げる。
その言葉に、小さく頷く。
「指名っていうか……きっと、彼の突拍子もない、ただの思いつきですよ」
「いいえ。大輔さんは仕事には妥協しない人ですもの。きっと芹沢さんが秘書として才能があると見込まれたのね」
大きな瞳を柔らかく細めて、ニッコリと笑った彼女。
その言葉と笑みに、思わず頬が緩む。
応接室の一室を借りて、私と桃香さん、柳瀬さんの3人という、不思議なトライアングルで会話は進む。
初めは決まづくて言葉一つ落とせなかったけど、今では少し雰囲気も和やかになってきた。
そんな中、気づいた事。
それは、桃香さんはとってもいい人だって事――。
「芹沢さんが、羨ましいです」
少しの沈黙の間に紅茶に口をつけた私に、そんな声が落ちてくる。
視線を上げると、少し悲しそうに微笑む彼女がいた。
「羨ましい……ですか?」
「えぇ、とても。だって、大輔さんに認められて、尚且つ毎日彼の傍にいれるんですもの」
少しだけ拗ねた様に唇を尖らせた彼女を見て、口に運んだティーカップが動きを止める。
ゆらゆらと揺れているのは、きっと私の瞳。
彼女の心に、真っ赤な想いを見たから。
私と同じ様に、真っ赤な――。