嘘つきな君
呆然とその姿を見つめる私を他所に、余裕な表情で長い指をお腹の上で絡ませて深く座席に腰かけた彼。

その姿を、ただ見つめる。


だって、今笑った。

今まで見てきた嫌味ったらしい笑みや、不敵な笑みじゃない。

素直にでた笑みで。


横顔しか見れなかったけど、その表情を見て胸が温かくなる。

どうしようもなく、嬉しくなる。


やっと、笑ってくれた。


無意識に上がっていく頬を隠すように、視線を前に向ける。

どうしてだろう、嬉しくて仕方がない。

上がる頬を抑える事が出来ない。

そんな中、不意に常務の声が車内に落ちる。


「ただ、今日なんて序の口だぞ。時間に余裕があるくらいだった」

「え、あ、あれでですか!?」

「常に分刻みだ。覚悟しておけよ」


ニヤリと笑った顔を見て、ヒヤリとする。

今日だけで、もうクタクタに疲れたのに、これ以上に忙しい事なんてあるの!?


「もう嫌になったか?」


心の中の呟きが顔に出ていたんだろう。

私の顔を見て、意地悪くそう尋ねた常務。

その言葉を聞いて、負けず嫌いな私の心に火がつく。


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