朝、目が覚めたらそばにいて
「次は正太郎さんの番ですよ」

「何が聞きたい」

「あ、聞いたら何でも答えてくれるんですか?」

「場合による」

「えー、ずるい。私なんて何の変哲も無い自分をさらけ出したのに」

「あれでか?お前がまだやりたいことが見つかってないって話だけじゃ無いか」

「要約されるとなおさらちっぽけな自分に思えるのでやめてください」

「ちっぽけな人間なんてたくさんいる。大きくなりたいと思ったら行き先を見つけて羽ばたく努力をすれば良いし、ちっぽけな世界の中でも幸せを見つければ良い」


お酒がそうさせているのかもしれないが、正太郎さんが今までより饒舌になっていることが嬉しい。
それに彼のその言葉が私の胸に響いた。


いつだって夢見ている、ふわふわしている、流されて生きていると言われていた。
本当はじっくりゆっくりと考えて決めていきたいのに、世間の流れに自分のスピードが合わないうちに物事だけがどんどん進んでいく。答えが出ない自分を周りが押し流してしまうのだ。

だから、ちっぽけな世界でも自分なりに幸せを見つければ良いと言ってくれた正太郎さんの言葉が嬉しい。何気ないことを言ったのかもしれないけれど、私にとって「ゆっくり進めば良いんだよ」と言われたようで。


「そうですよね…」


「ああ、人に合わせるとか、人がやってるからとか、くだらないね」


正太郎さんはまた熱燗を手酌する。
私もつられて甘くてカクテルのような冷たく冷えた日本酒をゴクッと飲んだ。

< 33 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop