初恋の人
- 結婚を約束した人 -

その紳太郎さんの言葉に、私の胸には、何かが刺さったような気がしました。

どうしてこんなにも、胸が痛くなるのだろう。

どうして。

どうして……

この時の私には、分からない事でした。


「どんな人だ?」

「旅先でお世話になった人です。」

「そんな得体の知れない者では、駄目だ。」

「どうしてですか!兄さんは自分が決めた人と、結婚したじゃないですか!」

「俺はおまえと違って、この家に相応しい者を選んだんだ!」

両者は、互いに一歩も譲らず、話し合いは終わってしまいました。

部屋には、一向に動かない紳太郎さんだけが、残されていました。


私と倫太郎さんはと言うと、自分達の部屋に戻って、一休みしていました。

「紳太郎は、結婚すると言う事が、どういう事なのか分かっていないのだ。」

夫は怒りながら、私が差し出したお茶を飲んでいました。

「ねえ、あなた。」

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