ロマンスがありあまる
専務の後ろ姿を見送ると、私はリビングに戻った。

「お父さん」

父の隣に腰を下ろすと、私は声をかけた。

「全く、何で黙っていたんだ?」

父が言った。

「結婚を前提につきあっている恋人がいるならいるって、何で黙ってたんだ?

しかも、婚約をしているなんて…異動の話よりも重要だぞ」

「ごめんなさい…。

でも相手が会社の跡継ぎ息子だって言うことを知ったら、お父さんは気絶するんじゃないかと思っちゃって…」

「俺の心臓はそんなにも弱くない」

「ですよね…」

そう呟いた私に、父はフッと笑った。

「彼なら大丈夫だ」

そう言った父に、私は首を縦に振ってうなずいた。

「幸せになるんだぞ」

「うん」

私たちはフフッと笑いあったのだった。
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