ロマンスがありあまる
その翌日。

いつものように会社に出勤すると、やけに自分の方に視線が向けられていることに気づいた。

「ねえ、あの人よ」

「へえ、地味な外見のくせになかなかやるわね」

ヒソヒソとあちこちから聞こえる声に、私は訳がわからなかった。

一体、何なんだろう…?

と言うか、感じが悪いなあ。

言いたいことがあるなら、直接言ってくれればいいのに…。

私と目があったとたん、慌てたように視線をそらされた。

まるで見てはいけないものを見てしまったと言うようなその態度に、全くと言っていいほどに心当たりが浮かばない。

私が何をしたって言うのかしら?

そう思いながら、私はきたばかりのエレベーターに乗ったのだった。
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