空を拾う



 リビングのドアを開けると、ソラはソファーに両足を抱え座っていた。


 低いボリュームでレコードを聴いている。ローテーブルには空っぽのワイングラスと食べかけのチョコレートバーが転がっていた。


「ピアソラ、好きなのか」


 そうしたくて、悟は背後からソラの髪に口づけた。ソラからは昨日と同じ、日向の匂いがした。


「初めて聴いたの」


 そう言って、ソラは目蓋を伏せたまま機嫌良く微笑んだ。





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