私と王子様のプロローグ
神崎さんは会場の中央にいる蓮見先生を眩しそうに見つめる。
蓮見先生は柔和な表情で、けれど凛とした雰囲気を崩さず対応している。
「若くして一流作家と呼ばれるだけありますね。二歳年上なだけなのに」
「蓮見先生は、強いお方ですから」
皆が皆善良な感情で蓮見先生にすり寄っているわけじゃない。
取り囲んでいるうちの何人かは心無いことを考えているに違いない。
それすら飲み込んで王座に君臨している様は圧巻だ。
「水野さんはずいぶん先生を慕っているんですね」
「もちろん。蓮見先生を嫌いになれと言う方が難しいと思います」
「はは、そういう返し方をされたら何も言えないな」
神崎さんが言わんとしていることは大体分かったため、敢えて逸らしたのだ。
「神崎さん、初めにお会いしたときから私と蓮見さんのこと、何かと気にしてますけど」
もしかして嫉妬ですか、と。