カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
婚約

知れ渡る婚約

蒸し暑い夏が終わろうとする9月の終わりに、慈英から告げられた。


「心菜。」

「ん?」

「10月末の取締役会決議の日、婚約を発表する事になった。心菜、一緒に出席してくれ。」


10月末…………つまりは一ヶ月後だ。

『取締役会決議で発表する』となると、社報にて社内には話が行き渡る。

つまりは社員に知れ渡る。


「心菜、いいよな?」


いつの間にか俯いていた顔を上げて、慈英に視線を向けた。

不安げな表情をする慈英に笑みを見せる。


「うん。えっと…………いつもの服装でいい?」


そんな事しか思い浮かばない。

私が取締役会に出席する事はない。

秘書課で出席するのは社長秘書の武内さん、恵さん、秘書課の課長もだ。

新人の私が出席した所で話は分からない。

そんな会議に出席する事になるとは思ってもいなかった。


「入籍は二人の出逢った日を予定してる。覚えてるか?」

「4月…………?」

「5日だ。」

「よく覚えてるね。」


感心してしまった。
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