カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
「兄さん、場所を考えたら。」


冷静な声が耳に飛び込んできて、涙も引っ込んでしまう。

言うまでもなく恵さんの声だ。

途端に騒めく飲み会。


「ちょっとヤバい。」

「副社長に見惚れちゃった。」

「おいおい慈英。場所を考えろ。」


飛び交う言葉。

さっきまでのムードは一変して、騒めきが起こり始めた。

私の鼓動も徐々に落ち着いていく。


「でも素敵。副社長はやっぱり最高です。」

「ありがとう。」

「幸せになってください!」

「もちろん。」


笑みを浮かべて先輩方に答える慈英。

人の心を掴む術を心得ている。


「雨宮さんも幸せにね。」

「はい。」


私も笑顔で答える。

秘書課での飲み会は無事に終了した。

ほろ酔いの私は慈英と二人で帰る。

勿論、二人で暮らすマンションへ。


「慈英、今日は嬉しかった。ありがとう。」

「今日だけか?」

「ううん、いつもありがとう。」


酔いのせいか素直な気持ちが口から自然と出てくる。

改めて慈英の愛を感じた。

だから私も伝えたい。


「慈英、私も幸せにしてあげるから。」

「期待してる。」


交わる視線に顔が近づく。

目を閉じた私の唇にキスが落とされた。
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