カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
手を繋いでフロントに向かう。


「慈英、年度末は忙しいでしょ?」

「忙しいが、時間は作るから大丈夫?」

「やれる事は私がやるよ?」

「心菜に負担を掛けると思うが頼む。」

「負担じゃないよ。私と慈英の結婚式だよ。」


そうだ。

2人の結婚式なんだ。

慈英が忙しいなら私が補えばいい。

半年後には結婚式を挙げる。

式場も決まり、一気に前に進んだ気がする。


「結婚式。」

「ん?」

「今日、色々と話を聞いて『慈英と結婚するんだ』って改めて自覚した。」

「俺も『心菜と結婚出来るんだ』って思った。」

「残り半年だね。」

「言っとくが、入籍は四月だから。」

「うん。でも結婚式は特別じゃない?」

「そうだな。」


フロントで清算した慈英とマンションへ帰る。

タクシーの中でも手は繋がれたままだ。


『ずっと一緒に生きていくパートナー』


なんだと改めて思った。


「慈英、これからも宜しくね。」

「ははっ、急にどうした?」

「なんとなく伝えたくなった。」

「こちらこそ。」


繋がれた手を持ち上げられ、慈英に視線を向けた。


「心菜、これからも宜しく。」


私の台詞を笑った癖に、同じ言葉を返す慈英に笑いが込み上げてくる。


「ふふっ、こちらこそ。」


私も同じ言葉で返した。
< 190 / 216 >

この作品をシェア

pagetop