溺愛王子様のつくり方
「……っ」



環の言う通り、ディスプレイには不在着信20件の文字。

そのどれもがちとせちゃんからだった。



「かけてきすぎだろ……」



ちとせちゃんというたくさんの文字。
その文字をみただけで、胸の奥がチリチリする。


今日、放課後。
二人で帰って、俺から告白する段取りだった。

もう、そんなことするつもりはないけど。



「なんでだよ……」



スマホを自分の胸に当てる。

なんで、全然なくならねぇんだよ。
違うだろ。
本来の目的は、あいつを俺に惚れさせてズタズタに傷つけることだろ。

俺が本気になってどうすんだよ。

そんなことしてる間にも震え続ける手の中のスマホ。
相手はもちろんちとせちゃん。




「うるせぇ」



そのまま窓を開けて、スマホを放り投げる。



「おい、学なにやってんだよ」


「こんな時なのに、頭から離れねぇんだよ。だから、連絡手段なんて絶ってしまえば……もう」


「学……」



恨みの糧。
いや、ちとせちゃんが悪いわけじゃない。

でも、恨みを晴らす相手はもう彼女しかいない。


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