溺愛王子様のつくり方
「え、なんでそれ……」


「葉菜さんが」


「あいつかよ……」



はぁっとため息をついて、自分の顔を覆う。



「うーんと、どういうことかな?」



この中で唯一、その事実を知らなかった社長が首を傾げる。



「親父、俺……婚姻届出してないんだ。ごめん」



社長に向かって頭を下げる。



「うーんと、結婚発表もしたよね?」



社長の顔はあたしに向けてくれていた、暖かい笑顔ではなくて。
笑っているけど、奥の方ではナイフでも持っているのではないか。
そんな顔をしていた。



「ごめん、普通に考えてありえないことをしたと思ってる」


「それが、俺に対しての復讐か?」


「まぁ……そんなとこ」


「まぁ、そんな事実はどうにでもなる。だが、学。謝るべき人間を間違っているんじゃないか?」



社長の瞳があたしを見据える。



「ちとせ……」



社長の視線を追うように、学くんもあたしを見据える。

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