溺愛王子様のつくり方
「だよな……」



そう、小さく呟いて頷く。



「えっと、俺……「ごめんね、もう仕事の時間。プライベートは仕事後にしてくれるかな」



学くんの言葉を遮って、社長がわざとらしく机の上の資料を束ね出す。



「やられた……。まぁ、いい。仕事戻ります」



盛大なため息をついて、社長に背を向ける。



「ちとせも行くぞ」



歩き出すときにあたしの手を取って。



「父さん、俺は?俺は?」


「お前はなにもわかんないだろ。今日はここで色々教えるから」



社長もため息をつきながらも、なんだか嬉しそうにしてる。



「ずっと一緒にいられたタマが羨ましいな」



あたしには与えられなかった、父親という存在。



「いや、あそこでちとせが来てたら俺ら恋してねぇよ」


「そう?」


「まぁ、どんな立場でもお前のこと好きになれる自信はあるけど。でも、兄妹なわけだから気持ちは隠すんだろうなー」


「学くん……」



〝どんな立場でも〟
それは、この先何度だってあたしに恋をしてくれるってことで。

あたしは、浮き足立つ気持ちを抑えながら医務室に向かった。

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