次期社長の溺愛が凄すぎます!
灰はかぶるものではありません
***


4月も半ば、春らしく暖かくなってきた季節。

普通、見た目も気分も晴れやかなはずなんだけど、今の私はそれどころじゃない。


「君の恋人は浮気している」


無表情に衝撃的な発言をしたのは、目の前の見知らぬ人だ。

会社からの帰り道、最寄り駅に向かっていたらと、黒塗りの高級車が目の前に停まった。

そこから出てきた初老の男性に、間抜けにもパチクリと瞬きを返したと思う。


「弁護士の吉田と申します。斎藤麻衣子さんですね?」

差し出された名刺と、彼のスーツに弁護士バッチを見つけてパニックをおこしかけた。

22年生きてきて、道端で弁護士に声をかけられるなんて経験は、よくあることじゃない。

ホテルのラウンジに連れてこられると同時に、スーツ姿の一団に囲まれて、なんのかんのと言いくるめられ、辿り着いたのがこの部屋。


天井にはシャンデリア、壁紙はやわらかく落ち着いた色合いのオフホワイト、金色の額縁に納められた油絵がシンプルに飾られている。

その他にもアンティーク調の家具や、大理石で作られたであろう暖炉、床はふかふか絨毯。たぶんこれペルシャ絨毯とか言うんじゃないのかな……。

高級感漂う場に、まるでそぐわない安物のコートの私がめちゃくちゃおかしい。
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